アメリカの公立校ハイテックハイをご存じでしょうか。
独自の課題解決型学習が行われている学校として注目を浴び、世界中から教育従事者が見学に訪れています。
ハイテックハイには教科書や成績表がありません。
授業内容はそのクラスの教員に委ねられるほか、子供たちが意見や考えを出し合い授業が進むため、一つとして同じ授業がありません。
今回はハイテックハイがもたらす学びの効果とはどのようなものなのか詳しくご紹介します。
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ハイテックハイとは
ハイテックハイ(High Tech High)は、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴに設立されたチャータースクールと呼ばれる公立高校です。
2000年の開校以来、系列の小中学校に加えて大学院が設立され、現在は14校が開校されています。
ハイテックハイは政府や州からなどの公費によって運営されるため、授業料が無償です。
抽選で入学者が選ばれるため、生徒の人種やバックグラウンドが多種多様であり、生徒の約5割は低所得層の子供たちです。
経済的な理由があるだけでネガティブになりがちな生徒にも前向きに学習ができるよう、いかなる家庭環境の生徒にも平等な教育の機会が与えられています。
ハイテックハイが注目されている理由
教員によって学習の方向性やプロジェクトのテーマなどは与えられますが、具体的には子供たちが自分たちでテーマを考えプロジェクトを進める学習スタイルです。
また、ハイテックハイでは、テストなどの定期的な試験がありません。
テストの代わりに行われる展示会では、クラスやチームで作品を作り上げる一大イベントとなっています。
テストなどの定期的な試験がないにもかかわらず、ハイテックハイの生徒の学力は州で実施が定められている統一学力テストでは平均を上回り、四年制大学進学率は9割を超えます。
入学者の希望と同じくらいに教育熱心な講師の応募が絶えません。
それほどハイテックハイは教員も学び成長できる環境であり、先生が生き生きとしていることで、生徒たちにとっても、いい教育環境が生まれるという相乗効果があります。
PBLとは
PBLとはProject Based Learningの略で、課題解決力を目的とした学習を意味します。
国内でも文科省が推進するアクティブラーニングの一つで、暗記型ではなく、子供が主体となって、学ぶ目的やプロジェクトのゴールを設定し、取り組む過程を重要視した教育スタイルです。
目的意識が明確化されているため、学びがしっかり定着する効果があります。
日本では、2022年度からの新学習指導要領の導入で、高等学校の教育課程に「探究」が新たな科目として加わります。
探究学習とは、文部科学省では「問題解決型の学習」と定義しています。
まさにPBLはこの探究にあたる学習のスタイル。
PBL学習は会社や企業でプロジェクトを立ち上げ、チームで商品開発や販売戦略などを計画する過程と類似性があり、社会に出て仕事をする上で不可欠なスキルでしょう。
PBLによる問題解決力を学生のうちから養うことは重要であると考えられます。
PBLについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ハイテックハイの学年ごとの特徴
Elementary school
ハイテックハイはどの学年においても数学・科学・芸術に関する教育に重きを置いています。
特に日本の小学校1~5年にあたるElementary schoolでは、ハイテックハイでの学習の入り口として自己実現に重点を置いた教育やアイデンティティを育むサポートが充実しています。
科学を題材としたプロジェクトでは、潮の満ち引きと生態系の関係について現地調査が行われ、学術的な専門用語を使用し調査結果をまとめることも学びの一つとされる総合的な学習です。
また、 体育と科学、栄養学の分野の学習を組み合わせ、健康を維持するための運動やバランスの取れた食生活について探究する授業など、興味深いプロジェクトが多く行われています。
いずれも一つのプロジェクトに数週間から数ヶ月に及ぶ期間が費やされるため、学習の理解度や知識の定着が期待できます。
Middle school
小学校6年から中学生にあたるMiddle schoolでは、複数学年の合同プロジェクトが実施され、半年間にわたる長期プロジェクトも少なくありません。
Elementaryの生徒よりさらに抽象的な思考ができるようになるため、PBLの効果が得られやすい年代でもあります。
人文科学にあたるHumanitiesは日本の義務教育ではあまりなじみがありませんが、国語や社会の延長線上の学習で、文学や歴史、哲学、地理、倫理など幅広い分野に関わる授業が行われます。
ハイテックハイではアートに関する学習分野が細分化されていることが特徴的です。
パソコンを使うデジタルラボや、工作室、絵画室など、扱う媒体によってそれぞれ教室が用意されており、一学期ごとに違うメディアを習得していくためスキルの幅が広がります。
High school
高校生にあたる9~12年生のHigh schoolでは、「アート×物理学」、「数学×科学×人文科学」など一つの教科にとどまらず、社会貢献に繋がるテーマやフィールドワークなどハイテックの集大成とも言える主体的な探究が行われています。
都市での農業活動に関するプロジェクトでは、作物の育て方や農作業を行うための労働力、農作物を効率的に生産し流通する独自のシステム構築、廃棄物を減らすための対策など、授業そのものが社会的な活動となるケースも多くあります。
地域に根付いた問題や題材に特化したプロジェクトが多く、プロジェクトを通じて高度なITスキルやプレゼン力、経営に関する知識などを幅広く習得しています。
ハイテックハイを舞台にしたドキュメンタリー映画「Most Likely To Succeed」
2015年、起業を支援するベンチャー投資家であったテッド・ディンタースミス氏のプロデュースにより、ハイテックハイを舞台にしたドキュメンタリー映画「Most Likely To Succeed」(成功に一番近い教育とは)が制作されました。
現在の試験や受験重視傾向にある教育に疑問を抱いたディンタースミス氏は、教育に改革をもたらすため教育界のオピニオンリーダーに転身。
「AIなどの人工知能やロボット技術が発達した21世紀で、子供たちに必要な教育とはどういうものか」をテーマに、引っ込み思案だった子が少しずつ積極的になり、リーダーシップを発揮して行く姿や、幾度もの失敗にめげず作品を作り上げていくハイテックハイの生徒の様子が描かれています。
この映画は教育界を中心に話題となり、日本でも全国各地で上映会が開催されています。
映画鑑賞後に設けられるディスカッションでは、教育関係者や子を持つ保護者などさまざまな立場から教育のあり方について意見交換がされています。
まとめ
既存の教育、そしてハイテックハイのような新しい教育、どちらが子供の将来にとってメリットがあるのかは研究結果が出ているわけではなく、教育の選択が子供にどのような影響を及ぼすのかは未知数です。
授業を受け板書を取る、与えられた課題を提出する、定期的な試験とそのための勉強に費やす労力や時間は果たして本当に必要なものであるのでしょうか。
新学習指導要領が導入され教育内容の見直しが行われている今、ハイテックハイのような学びの形が日本でどのように展開されていくのか注目です。
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