最先端教育

IT教育の目的・現状・課題まで!国内、海外の取り組みもご紹介!

IT教育

みなさんは「IT教育」というと、どのようなことをイメージしますか?

また、「IT教育」によって子供たちの学習は、どのように変わっていくのかご存知でしょうか。

教育指導要領が改訂され、プログラミング教育などIT教育にますます力がそそがれるようになってきました。

IT教育と言われているものの中には、

  • プログラミング教育などの「情報教育」
  • タブレット端末などを活用する「教科指導におけるICT活用」
  • メールなどの「公務の情報化」

が含まれています。

今回は、「IT教育」とは何か、その目的や現状、課題について、国内外の取り組みも含めてご紹介します。

ぜひ最後までお読みください。

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IT教育が注目を浴びている背景

2020年度、小学校でプログラミング学習が必修化され、子供や子供を持つ親だけでなく、教育業界、社会からもIT教育が注目を集めています。

背景として、日本のIT人材不足があります。

現在の日本では、これからさらに必要性が増すセキュリティやAI、ビックデータを扱える人材が求められいます。

また。IT先進国の状況と国内を比べ、なかなか進んでいない教育現場のIT化を、なんとかして打開していかなければなりません。

文部科学省は2019年に「教育の情報化に関する手引き」において、「学校における教育の情報化を推進していくことは極めて重要」と記しています。

さらに、文部科学省によって「学校における先端技術の活用に関する実証事業」がまとめられ、ロードマップでは、3年目には「先端技術の効果的・効率的な活用モデルを確立するとともに、他地域への展開を見据えた導入・運用フローを整理する」としています。

IT教育の目的

IT教育はなぜ必要なのでしょう。

IT教育の必要性は2点挙げられます。

まずは「IT人材育成」という意味での教育です。

経済産業省の発表では、2020年に37万人、2030年には約79万人のIT人材が不足するというデータがあります。

プログラミング教育が必修化され、小さい頃からプログラミング教育を受けることで、工学系などの大学への進学の希望者が増えることも一つの目標です。

さらに、IT技術に長けた人材がIT分野や各産業に増えていくことも必要です。

IT教育の目的の2つ目は、現代社会に即した「ITを利用した教育」です。

IT環境を利用して学習を行うことで、メリットがいくつもあります。

たとえば、学びのイノベーション事業に具体例が示されているように、従来的な一斉学習に応用させるだけではなく、インターネットを用いた情報収集や家庭学習に利用する「個別学習」、電子黒板に表示させグループや学級全体での発表や話し合い、遠隔地や海外との交流授業などに利用する「協働学習」といったことができるようになります。

板書などの時間が短縮できたり、イメージの共有がわかりやすくなったり、国際的なコミュニケーションが取りやすくなったりするでしょう。

関連:なぜ?プログラミング教育必修化の背景・目的・ねらいについて簡単にご紹介!

「IT」と「ICT」の違い

ITはICTと呼ばれる場合があります。

一般的に、どちらも同様の意味で使われています。

それでは、「IT教育」と「ICT教育」は何が違うのでしょうか。

ITとは、Information Technology(情報技術)の略で、主にコンピューター関連の技術に対して使われます。

「IT教育」という言葉は、総務省のデータで使われることが多くあります。

一方、ICTとは、Information and Communication Technologyの略です。

「コンピューター技術の活用」の意味で使われることが多くなっています。

文部科学省での表記では、「ICT教育」という言葉が使われており、国際的に定着した表現のため、近年は「ICT教育」が使われることも増えています。

日本のIT教育の現状

社会

現代社会では、企業のさまざまな場面で情報技術の利用が進んでいます。

以前では、ITやプログラミングに関することは、エンジニアなど一部の人材のみが持っている知識や技術でした。

しかし最近は、さまざまな分野で、企業内に情報技術者を雇うなど、ITエンジニア以外にも情報システムに関する知識が求められるようになってきました。

社会人向けのプログラミングスクールや、IT留学を行う専門学校などもあり、初心者向けや転職希望者向け、より高度な技術を取得する人向けなど、学ぶ内容も多様化しています。

また、コロナウイルス感染拡大防止による社会状況の変化によって、IT教育を受けたいという希望者も増えています。

 

学校

日本のIT教育の現状については、「プログラミング教育の必修化」が大きな動きと言えるでしょう。

文部科学省の新学習指導要領のポイントには、小中高等学校共通のポイントとして、

  1. 情報活用能力を、言語能力と同様に『学習の基盤となる資質・能力』と位置付け
  2. 学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実に配慮

の2つを記しています。

小学校では、2020年度にプログラミング教育が取り入れられ、学校の裁量で、それぞれの教科の中でプログラミング的思考を育成することになりました。

中学校では、2021年度に技術・家庭科の「D情報の技術」の内容を充実させるとしています。

プログラムによる計測・制御に加えて、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングについても取り上げ、情報セキュリティなども学ぶとのことです。

また、高校では、2022年度から学年進行で新学習指導要領を実施すると発表されています。

情報化に「情報Ⅰ」という共通履修科目を新設し、すべての生徒がプログラミング、ネットワーク(情報セキュリティ含む)、データベースの基礎などについて学習することになっています。

関連:プログラミング教育とは!目的・背景・事例・課題点まとめ

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学校でのIT活用例

授業内でのIT活用例

授業で使用するICT機器の中で、PCやタブレットとともに、電子黒板の導入が急がれています。

文部科学省のパンフレット授業がもっとよくなる電子黒板活用に具体例があります。

「前時の学習を振り返る」では、小学3年生の国語の授業での例が書かれています。

前回の時間の内容で、注目させたいところをマーキングしたり、ポイントを書き込んだりすることで、児童に視覚的に捉えさせることができるとしています。

また「わかりやすく説明する」では、中学2年生の社会の授業で利用している例が挙げられています。

デジタル教科書の地図の拡大したい部分を、タッチペンを使って選択して拡大表示でき、そこに矢印などを書き加えながら、教員が説明を加えています。

 

教員の業務に関するIT活用例

文部科学省は学校における働き方改革に関する緊急対策で、教員の使用するPCに「統合型公務支援システム」を早期に導入するよう求めています。

統合型公務支援システムは、名簿管理、出席簿、成績処理、通知表、指導要録といった手書きで繰り返し行っていた作業に対して、ICT機器を活用することで業務の効率化を図っていこうというもの。

すでに先行して導入している大阪府大阪市では、教員の業務時間が年間で約220時間効率化できたとしています。

平成31年3月時点での統合型公務支援システムの整備率は57.5%となっていますが、今後も各自治体で導入が進んでいく予定です。

参考:統合型校務支援システムによる業務の効率化について

IT教育に対する国内の取り組み

国内のIT教育がなかなか進まない現状として、

「何を整備すればいいのかわからない」
「予算要求が通らない」
「人手が足りない」

などの要因が挙げられます。

そこで、日本教育情報化振興会によるICT活用教育アドバイザー派遣事業が行われています。

学校・教員の問題だけでなく、地方自治体、教育委員会と連携して、IT化を早急に実施できるように、ITに知識のあるアドバイザーが派遣されます。

また、ICT機器の導入には、自治体の予算によりスピードに差が出てきています。

今後、ICT環境の導入が進み、教員の業務効率化が進んでいくことが大きく期待されています。

関連:小学校プログラミング教育の事例をまとめてご紹介!

IT教育に対する海外の取り組み

日本のIT教育は、世界各国に対して後れを取っている、と言われていますが、海外の取り組みはどのように行われているのでしょうか?

IT先進国である海外のIT教育の状況を確認していきましょう。

文部科学省の諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究報告書やOECDの調査を中心に、それぞれの国のIT教育の取り組み状況をまとめてご紹介していきます。

 

エストニア

エストニア共和国は、バルト三国の一番北に位置しています。

面積が日本の約9分の1で、人口は約132万人の国家です。

1991年にロシアから独立し、世界経済危機を克服後はIT立国を推進してきました。

1997年に教育省によって設立されたタイガーリープファンデーションによって、

  • 学校向けのコンピューターとインターネット接続
  • 教育用ソフトウェアの開発
  • 教師の研修

が進められてきました。

現状、エストニアにおけるプログラミング教育の導入は、学校や指導者の判断にゆだねられていて、学校ごとに独自のカリキュラムを持っているとのことです。

ベーシックスクール(1~9年生)は教科「Informatics」の中でITに関する学習が行われます。

アッパーセカンダリースクール(10~12年生)では、ITを活用して課題を解決し、作業をより効果的に進めることが目標とされています。

エストニアにおけるIT教育の課題としては、教員が不足していることと、プログラミング教育の導入が学校や指導者の判断で行われる点が挙げられます。

 

イギリス

イギリスはIT教育の先進国家です。

2013年までは、ICTという教科で学習されてきましたが、「Computing」が新設され、初等学校・中等学校の11年間で必修と定められています。

Computingは、義務教育終了時に受験する全国統一試験制度で「Computer Science/Computing」を受験する人が、主に履修している教科です。

CS(Computer Science)、IT(Information Technology)、DL(Digital Literacy)の3つの分野から構成されています。

初等教育では、担任制のため「Computing」の授業を行うことに専門の資格は必要ありません。

初等教育で使用する言語は、Scratch、LOGO、Koduです。

また、中等教育においては、教科担任制ですが、教員免許のほかに資格は必要なく、以前のICTを教えていた教員が担当していることが多いです。

中等教育で使用する言語は、Scratch、Kodu、Pythonです。

問題点としては、教員の知識やスキルが不足していることや、教員自体が不足していることなどがあります。

 

オーストラリア

オーストラリアにおけるIT教育は、日本における幼稚園の年長(5歳児)の年齢から、必修として始まっています。

カリキュラムの目標としては、就学前から2年生までは、「簡単な問題解決方法を設計すること」などがあります。

3~4年生以降の指導内容としては、

3~4年生 分岐処理とユーザーからの入力を含む簡単なビジュアルプログラミングを行い、問題解決をする
5~6年生 分岐処理、繰り返し処理、ユーザーからの入力を含む簡単なビジュアルプログラミングを行い、問題解決をする
7~8年生 汎用プログラミング言語において、分岐処理、繰り返し処理、関数を利用し、ユーザーインターフェースを含むプログラムを実行し修正する。
9~10年生(選択) 選択したアルゴリズム、オブジェクト指向プログラミング言語を利用したデータ構造を応用し、モジュールプログラムを実行する。

 

となっており、かなり具体的な内容を学習するようになっています。

 

アメリカ

アメリカ・シリコンバレーのあるカルフォルニア州の教育カリキュラムに、プログラミング教育は明記されていません。

学校の裁量に任されているということと、予算削減のため、プログラミング教育コースを提供できない学校もあるとのことです。

そのため、コンピュータサイエンス教育を推進する全米規模の組織であるComputer Science Teachers Association(CSTA)は、義務教育に取り入れるように働きかけています。

指導内容や教材などは、学校によって変わり、JavaやVisual Basicなどを学んでいるところもあります。

しかし、民間ではプログラミング教育を提供している機関があり、Scratch、Java、Python、C++などが学ばれています。

 

イスラエル

イスラエルは、面積が2.2万平方キロメートルの、日本の四国程度の大きさの国で、人口は約888万人です。

ハイテク・情報通信分野などで経済成長を続けていて、いまやイスラエルはIT大国となっています。

IT教育については、1970年代半ばからコンピュータ教育の必要性を認識し、カリキュラムの開発やプログラミング教育を行ってきました。

現在はComputer Science (CS)が高等学校の3年間で、独立した教科として教えられています。

「アルゴリズム的思考を開発し、アルゴリズムをプログラミングで実装する」ことを目的としていて、内容としては、アルゴリズムの基本理論、論理プログラミング、コンピュータサイエンス理論などがあります。

5ユニットあるプログラム(1ユニット90時間)のうち、2ユニットは必修となっています。

 

ベトナム

ベトナムは、経済が発展しつつあり、同時にIT化が進んでいる現状があります。

IT産業が拡大しており、また若い世代の人口が増加しています。

2012年のOECDが実施する15歳を対象とした学習到達度調査(PISA)において、「科学的リテラシー」で8位、「数学的リテラシー」で17位と平均を上回る結果でした。

ベトナム政府は、IT人材育成支援策として、IT人材を約100万人まで増大させるとしています。

また、ベトナムで毎年約5万人の学生が、IT系の学科を卒業しており、今後ますますIT人材が輩出されていくのではと期待されています。

 

ロシア

ロシアは、ナショナルカリキュラムに準拠して、州ごとにカリキュラムを定めています。

プログラミング関連の授業を2~11年生で「インフォルマティカとICT」という教科で必修として行っています。

初等教育の4年生まででは、アルゴリズム、中等教育の5~11年生でプログラミング教育を含む内容となっています。

ロシアでは、初等教育からプログラミング関連の教育を必修で受けているため、国民にとって、ITやプログラミングがとても身近なものになっているようです。

ユネスコの調査では、エンジニアリングの卒業生が最も多い国はロシアとなっており、IT教育が成功している例だと言えるでしょう。

参照:Which country has the most engineering graduates?

海外事例をもっと知りたい方はこちらの記事をご一読ください。

プログラミング教育の海外事情まとめ!9カ国からみえるプログラミングを学ぶ必要性

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成功しているIT教育から見えるポイント

指導者の質が高い

イスラエルで指導者になるには、CS(Computer Science)学士号を取得し、教育省による教育免許が必要です。

また、イスラエルは2000年に国立コンピュータサイエンス教員センターを設立し、専任指導者の養成に取り組んでいます。

高度な知識を持った指導者を養成するためには、それなりの力を注ぐ必要がありそうです。

 

早期教育を実施している

ロシアのIT教育は、初等教育の早期という非常に早い段階から行われています。

また、アルゴリズムやプログラミング教育という高度な内容を学んでいます。

イギリスも、「Computing」という授業で初等教育から必修として導入されています。

エストニアは、選択科目ですが、初等教育よりプログラミング教育を導入しています。

 

環境が整っている

OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018報告書において、「デジタル技術が不足している」「インターネット接続環境が不十分」に回答が少なかった国は、オーストラリアで約11%とほかの国に比べて低い数値となっています。

これはソフトウェア、コンピュータ、タブレット、電子黒板とインターネット接続についての質問で、上記の不足をあまり感じていないことが数値に表れています。

イギリスでは2003年頃から、すべての教室に電子黒板が導入されています。

教師が使いやすいICT環境の整備、ICT機器活用の普及のためのさまざまな条件整備を行っているとのことです。

日本のIT教育の課題と今後

上記のOECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018報告書において、OECD各国の中学校教員に対する調査の結果が示されています。

日本で「生徒に課題や学級での活動にICT(情報通信技術)を活用させる」に「しばしば」または「いつも」行っていると回答した教員の割合は、2013年に9.9%、2018年には17.9%となりました。

諸外国の状況を下記に記載します。

2013年 2018年
エストニア 29.2% 45.6%
イギリス 37.1% 41.3%
オーストラリア 66.8% 78.2%
アメリカ 60.1%
イスラエル 18.7% 51.8%
ロシア 47.6% 69.0%

 

日本は、ほかのOECD加盟国の中で一番低い値になっています。

現状は、ICT環境の整備が途上のため、課題や学級での活動にICTを活用することができていないようです。

今後、統合型公務支援システムや電子黒板、タブレット端末などが各学校に普及していく中で、課題や学級でICT活用が進んでいくことでしょう。

また、茨城県つくば市は、コロナウイルス感染拡大の影響を受け、第二波に備えて貸し出し用タブレット端末を取り急ぎ700台導入しました。

コロナウイルス感染拡大の影響で、ますますリモート授業や家庭学習などの必要性が生まれくる可能性があり、同様に別の自治体でも、ICT機器の導入を進める動きがあるかもしれません。

まとめ

日本国内におけるIT教育の現状と、海外の取り組みを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

教育指導要領の改訂で、小学校からプログラミング教育が始まっていきます。

中学校・高校では、以前よりさらに踏み込んだ内容として情報技術・プログラミング学習が行われていくでしょう。

しかし、IT環境の整備といった意味では、まだまだIT教育の準備が整ってはいません。

平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果では、平成31年3月1日の時点で、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は、5.4人にとどまっています。

また、教員のICT活用に関する知識も、IT教育に関するスキルも、これからさらに養成していく必要があります。

今後、IT教育が普及されていき、整備された環境で次世代のプログラミング教育を受けた子供たちは、IT分野で重要な役割を担う人材へと成長していくことでしょう。

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