2019年12月に文部科学省が発表した「GIGAスクール構想」では、「1人1台端末は令和の学びのスタンダード」とし、多様な子どもたちに適した教育ができるよう改革がスタートしました。
これまでの教育にICTを掛け合わせることで、より一層充実した教育となることを目的としています。
本記事では、この教育現場のICT化をサポートする存在「ICT支援員」について深堀りしてみました。
ICT支援員ってどんな存在?
文部科学省では、2022年度までに4校に1人のICT支援員の配置を目指していますが、2021年3月時点では都道府県・市区町村ともに4割程度の配置となっています。
まずは、ICT支援員がどのような存在なのかをみてみましょう。
教育現場のICT化を助けてくれる存在
ICT支援員は、学校のニーズにあったアプリケーションやOA機器の提案、導入した設備のセキュリティ対策やメンテナンス、実際に使うときの操作説明・トラブル対応などを行います。
ICT支援員になるには、「ICT支援員認定試験」という民間試験に合格する必要があります。
原則20歳以上であれば受験でき、試験内容はA領域(実践的知識)とB領域(問題分析・説明力)があり、合格することで認定となります。
さらに2019年度からは、ICT支援員上級認定が始まりました。
所定の受験条件を満たしたうえで、C領域(問題解決・コミュニケーション能力)の試験に合格することで認定されます。
学校においてパソコン授業のサポーターといった仕事は以前からありますが、日々変化する現代のIT知識を備え、学校をサポートする存在として「ICT支援員」が作られたのです。
子どもたちの将来に必要な「情報活用能力」について
現代の子どもたちの多くは就学前からスマートフォンやタブレットに触れており、学校の友達や先輩・後輩とのコミュニティが、学校を出たあとでも常に続いていることがあります。
インターネットは便利な反面、利用するうえでのマナーやルール、インターネット・リテラシーなどをきちんと学ばなくてはなりません。
そのうえで、正しい情報を受け止めて、実際に起こっているさまざまな課題を解決できるよう考える能力が情報活用能力です。
こうした能力を育てるために、プログラミング的思考や情報ツールの使い方を授業で扱うようになりました。
授業では、実際に自分たちが普段から使うツールを使って、ある物事が正しいのかを調べることで、情報の取捨選択や事実確認を行うスキルを身につけ、調べたものを自分なりに解釈して根拠とともに発表をすることで、問題解決に向けた考え方などを学びます。
これを小・中・高でレベル分けをしながら学び、将来に必要な情報活用能力を育成します。
学校の働き方改革!専門家と協力することのメリット
ICT化の概要や何ができるのかを理解し、自分たちの学校に合った方法を見つけるには、専門家であるICT支援員と協力することが推奨されています。
ICT支援員は、授業の場面で児童にもサポートをしますが、支援するメインは学校の業務や先生方が対象です。
すでにICT化が進んでいる学校の実例を参考にしながら、先生方の負担を減らし、教育の充実化を目指せるので、働き方改革と教育改革が一緒に行えるというメリットがあります。
ICT支援員配置についてさまざまな事例
学校のICT化を進めるには、教職員・校長などの管理職・教育委員会が、その学校に合ったICT化を考えて導入をしなければなりません。
いくつか事例をご紹介しますので、参考になれば幸いです。
学校のICT化がスムーズだったケースと難航したケース
■スムーズだったケース
・ケース①
静岡県藤枝市では、機器の配備を進めていましたが、先生だけではとても対応しきれないことから、民間企業へICT支援員の委託を依頼しました。
操作方法の指導やウイルス対策、授業ではWeb上で工場見学を行うなど従来の授業では難しかったことが実現できています。
さらに学校に関するWebサイトのパトロールやいわゆる裏サイトの巡回を行ったことで、問題のある書き込みを早期発見することができ、トラブルの抑止と万が一問題が起きた際の対応などを事前にすり合わせることもできました。
・ケース②
岡山県では、委託先のICT支援員が県内の学校を定期的に訪問し、校務に関わるシステム化や学校のホームページ・SNSの投稿などを支援しています。
特にホームページは見やすいデザインにリニューアルし、教員による更新作業もスムーズにできるようになり発信力が大幅に上がりました。
■難航したケース
・ケース①
機器や端末の購入費・通信費など、学校や家庭における金銭的負担が増えることに懸念がありました。
対策:学校や児童が使用する端末など設備を整えるための支援を対象として、国から補助があります。
直近の予算案でもさらなる補助金について追加され、その中では設備を整える以外に、ICT環境設備の知見を有する者の配置経費なども支援されています。
・ケース②
ICT支援員とのすり合わせがうまくいかない・校務のICTが難しい場合があります。
対策:ICT化を成功させるには学校と支援員のコミュニケーションが必須です。
「オンライン授業をしたい」に対して、「できます」で終わるのではなく、教員側は「今の授業はこうしている」という現状を共有し、支援員側は実例を複数見せることでお互いに想像しやすくなります。
校務に関しても、伝達事項が多い学校では全教員が使えるコミュニケーションツールに専用チャンネルを設けて周知方法を一本化し、さらに学年・科目別など好きなようにグループで情報共有できるようにしたことで、手間が減ったという声もあります。
毎日発生する欠勤連絡や検温のデジタル化によって電話の数が減り、保護者の負担も軽減され、データ管理も行えるといった一石二鳥以上の成果もありました。
これから配置が必要なのに検討が進まない理由とは
文部科学省が2021年3月に集計したアンケートにおいて、既に導入した教育委員会によると、教員の負担軽減やICT活用機会が増え、指導力が上がったなどのメリットが挙げられています。
一方で、導入が進まない理由として「予算の確保が困難」という声があります。
多くの自治体では、会計年度任用職員として財源を確保し、非常勤職員という雇用方法を採用しています。
人件費以外の設備に関しても予算を決める際に、国の支援金とともに導入費を計上しますが、ここに盛り込むためには首長や予算に関わる人たちがICT化に前向きであることが必要です。
同じく文部科学省では、地方自治体を対象に導入に向けた「学校のICT環境整備推進の手引き」を公開しています。
この手引きでは、まずフローチャートで自分たちの自治体がどういう状況にあるかを振り分け、対処法を掲載しています。
ICT支援員の導入が進まないけれど、検討を始めたい・保留の状態から次のステップへ進みたいというときの参考になるので、ぜひ活用ください。
参考 :学校のICT環境整備推進の手引き
すでに支援員を配置している学校の課題
ICT支援員を配置している学校では、オンライン授業が軌道に乗ると「もうICT支援員は不必要?」と感じることもありますが、学びのスタンダードに向けて、校務のデジタル化など、まだできることがあります。
また、一部の教科は導入できたが他の教科では進まないといった学校内で差が生まれているケースもあります。
基本的にどの教科でもICT化は可能ですが、ここでネックとなるのが「あまり乗り気ではない人」です。
実際に導入した学校でも、教員の中に核となる人がいて、その人が動き出すと周囲も動き出したという事例があります。
こうした存在に動いてもらうためには、繰り返しのコミュニケーションが必要です。
その人にとってのメリットとともに、児童に対するポジティブな影響も伝えます。
たとえば、パソコンを使っている姿が「ゲームをしている姿と重なる」とネガティブなイメージを持っている保護者や教員もいます。
すでに、パソコンやスマートフォンなどの通信機器は必須の時代であり、早くから触れてルールやマナーを守るよう教えていくのが次世代の教育のひとつです。
そのために、大人である自分たちがまずはきちんと使って理解する必要性を伝えてみましょう。
ICTの活用によって、理由があって学校に来られない児童が授業に参加できたり、オンラインを通して他校や地域、企業と交流するなど、コロナ禍で中止していたことができるようになります。
教育の変化をサポートするICT支援員の導入によって、これまで苦手意識があった人でも気軽に相談できる環境が整い、より多くのICT化が進むことでしょう。
まとめ
諸外国と比べて日本のICT化や活用率が低い状況を脱するために、国をあげて教育のICT化を進めています。
ICT支援員は、令和におけるスタンダードな教育のために必要不可欠な存在です。
今の時点では授業のバリエーションが増え、校務の効率化が高まるといったメリットに注目されていますが、ICT化の波が広がることでさらなるメリットが生まれる可能性があります。
なによりICT化によって人と人の繋がりは広くなり、コミュニケーションを通して多様な価値観に触れることが多くなります。
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