いよいよ英語教育の本格化が進む日本。そんな中、英語「を」学ぶのではなく、英語「で」学ぶ、教育スタイルが注目を浴びています。
それが、英語イマージョン教育です。
今回は、英語「で」学ぶことによって、母国語と同レベルの英語力が身につく!とされる英語イマージョン教育について解説していきます。
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イマージョン教育とは?
イマージョン教育は、最も効果的な外国語教育法、と言われています。
「浸すこと」を意味する「immersion(イマージョン)」。
その名の通り、外国語にどっぷりと浸すことで、その言語をマスターさせるというのが、最大の特徴です。
例えば、英語を習得することが目的の英語イマージョン。
従来の外国語教育であれば、英語を教科として学び、単語や文法を丸暗記…。
なかなか話せるようにはなりません。
一方、英語イマージョンでは、算数、理科、音楽、体育などの教科を英語で学ぶことになります。
そこには、何かを学ぶ「ツール」として英語が存在します。
学校によって異なりますが、朝の時間、休み時間、給食なども「英語漬け」。
とにかく、学校生活のほとんどを、英語で過ごすことになります。
単語や文法を丸暗記するよりも、実生活の中で、英語をどんどん使っていこう!というのが、イマージョン教育の特色です。
小さい子が母国語を習得する過程に近い方法と言えるかもしれませんね。
イマージョン教育の種類
イマージョン教育は、外国語に触れる時間や、導入される時期などによって、いくつかの種類に分けられます。
大きく分類すると、One-Way Immersion (一方向性イマージョン)と Two-Way/Dual Immersion(双方向性イマージョン)の2つがあります。
ここでは、日本で一般的に行われている、一方向性イマージョンを詳しくみていきましょう。
一方向性イマージョンは、子どもたち全員にとって初めて触れる外国語を、ゼロから始めるプログラムです。
導入時期によって、早期(5・6歳から開始)、中期(7・8歳から開始)、後期(9・10歳から開始) に分類されます。
さらに、外国語に触れる時間の長さによって、Full Immersion(完全イマージョン)と、Partial Immersion(部分的イマージョン)に分けられます。
完全イマージョンでは、低学年の教科学習は100%外国語で行われ、学年が上がるごとに、その割合は下がっていき、5・6年生になるころには、50%程度に落ち着きます。
つまり、低学年の間は「徹底的に」外国語を浴びせるということになります。
一方、部分的イマージョンは、全学年で、外国語での指導を100%以下(通常は50パーセントほど)に維持する方法です。
通常は、母国語を話す教員と外国語を話す教員のティームティーチングで行われます。
日本の場合は、この部分的イマージョンを取り入れる学校が多く見られます。
イマージョン教育の歴史
日本でイマージョンと言えば、英語イマージョンが主流ですが、もともとの起こりは、1960年代 カナダのケベック州(フランス語圏)です。
英語を母国語とする保護者たちの「英語と同レベルのフランス語を習得させ、互いの文化や理解を深めてもらいたい」という想いから、イマージョンの試験的な導入が始まりました。
その後、効果が認められ、カナダ全土にフランス語イマージョンプログラムが広がっていきます。
2011年には、アメリカの38の州、実に500校以上でイマージョン教育が行われ、スペイン語、ドイツ語、中国語など、20カ国語以上の言語がイマージョン教育を活用して学ばれています。
現在では、カナダやアメリカだけでなく、オーストラリア、韓国、フィンランド、南アフリカ、日本など、多くの国に広がりを見せています。
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イマージョン教育のメリット
イマージョン教育の最大のメリットは、「英語で考え、英語を話す力」が身に付くことです。
英文法の間違いを気にしたり、頭の中で日本語から英語に変換したりする必要もなく、ネイティブスピーカーと同じように、英語で考え、英語を使うことができるのは、イマージョン教育ならでは、と言えるでしょう。
もちろん「聞き取り能力の高さ」と「発音の良さ」も嬉しいメリットです。
毎日、何時間も英語を聞くわけですから、難しい指示もしっかりと聞き取る力が身につきます。
さらに、まねっこが得意な子どもたちは、発音も抜群!
また、スピーチやプレゼンテーション能力の育成に力を入れる学校が多く、高度な英語力とともに、自己主張力も伸ばすことができます。
また、「多様性を受け入れる姿勢が育つ」というのも魅力のひとつです。
学校に在籍する先生は、アメリカ、イギリス、カナダ、フィリピン、インド、ニュージーランドなどとても多国籍で、肌の色や体型なども様々です。
そこから子どもたちは、世界にはいろいろな人がいることを、自然と学ぶことができるのです。
イマージョン教育を通して学んだ多様性を受け入れる姿勢は、社会に出ても、大きな財産となるでしょう。
イマージョン教育のデメリット
デメリットとして挙げられるのが、「子どもが受けるストレス」です。
子どもたちにとって、教科を英語で学んだり、友だちと英語で話したりすることは、ストレスに感じることもあります。
自分の伝えたいことが英語で言えないジレンマもあるでしょう。
これらは、一般的な学校に通っていれば、受けなくてよいストレスです。
こうしたストレスを少しでも和らげてあげられるよう、ご家庭でサポートをしていくことが大切です。
また、「日本人らしさが身につきにくい」場合もあります。
日本の学校では、掃除の時間や集会などの行事を通じて、団体行動や協調性を育みます。
こうした教育は、子どもたちの心を成長させ、自然と「日本人としての良さ」を生みだします。
しかし、イマージョン教育を掲げる学校は、個を重んじる傾向にあります。
心の教育につながる集会や行事が、極端に少ない場合は、日本人としての心が育ちにくいことも考えられます。
「協調性」と「個」のバランスをどのようにとっていくのか、そこがイマージョン教育の課題とも言えるでしょう。
イマージョン教育を受けられる学校
現在、イマージョン教育を取り入れている幼稚園、小学校は増加傾向にあります。
例えば、加藤学園(静岡県沼津市)、ぐんま国際アカデミー(群馬県太田市)、西武学園文理小学校(埼玉県狭山市)、ホライゾン学園仙台校(宮城県仙台市)、リンデンホールスクール小学部・中高学部(福岡県太宰府市/筑紫野市)、LCA国際小学校(相模原市緑区)、聖隷クリストファー小学校(静岡県浜松市 2020年開校)などです。
中・高等学校から導入している例としては、校佼成学園女子中学校・高等学校(東京都世田谷区)、立命館宇治高等学校(京都府宇治市)などが挙げられます。
また、英語に「浸す」という意味では、インターナショナルスクールも選択肢に入れてもいいでしょう。
幕張インターナショナルスクール(千葉県幕張市)、アオバジャパンインターナショナル(東京都複数個所)、コロンビアインターナショナルスクール(埼玉県所沢市)、など、様々な学校が全国に広がっています。
まとめ
英語教育の新たなスタンダードとしての可能性を秘めている、イマージョン教育。
メリット、デメリットを含め、導入時期、英語に触れる時間数、学費、特色や取り組みなど、学校によって、本当にさまざまです。
お子さんにどんな教育が合うのか、ご家庭の教育方針に照らし合わせながら、選択肢のひとつとして、考えてみてはいかがでしょうか。
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