学生の進路選択

スーパーグローバルハイスクール(SGH)とは!?指定校とその取り組み

急速にグローバル化が加速する現代。
日本においても、将来、国際的に活躍できるグローバルリーダーの育成が急務となっています。

その中で、グローバルリーダー教育を重点的に行う「スーパーグローバルハイスクール」の存在が注目されています。

今回は、スーパーグローバルハイスクールの概要や設置された目的、学習カリキュラムについてご紹介します。

また、実際にスーパーグローバルハイスクールに指定されている高校と、その取り組みについてもお話ししていきます。

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スーパーグローバルハイスクール(SGH)とは

スーパーグローバルハイスクール(以下、SGH)とは、文部科学省が国際的に活躍できる人材育成を重点的に行う高等学校を指定する制度です。

その目的は、社会課題に対する関心と深い教養、問題解決力、コミュニケーション能力などの国際的素養を身に付けた将来のグローバル人材を高等学校段階から育成することです。

国際化を進める国内の大学や、企業、国際機関などと連携を図り、グローバルな社会課題を発見・解決できる人材、グローバルなビジネスで活躍できる人材の育成に取り組む高等学校を文部科学省が公募し、SGHに指定します。

指定期間は、平成26年度から30年度までの5年間で、対象は国公私立高等学校および中高一貫教育校となっています。

SGHは、研究開発学校として独自の課題研究を中心とした教育課程を実践することができます。

単なる語学教育だけでなく、国際的に関心が高い社会課題をグループワークやディスカッション、論文作成、プロジェクト型学習等の形態で実施します。

SGHに指定されると1校あたり毎年上限約1600万円の支援が受けられます。

また、連携する大学に研究課題に関する指導を行う外国人教員の派遣を要請でき、海外研修などの企画立案やノウハウも提供されます。

大学との連携が得られ、文部科学省からの支援を受けることができ、独自の魅力的なカリキュラムを編成・実施できるSGHは、初年度の申請では数多くの学校が名乗りをあげました。

スーパーグローバルハイスクール指定校の数

では、SGHに指定された高等学校は実際にいくつあるのでしょうか。

文部科学省は平成26年度に56校、平成27年度に56校、平成28年度に11校をSGHに指定しました。

平成28年度までに指定された全123校のうち、国立高校が12校、公立が73校、私立高校は38校でした。

指定期間は5年間で、平成26年度に指定を受けた56校は、平成30年度に指定期間を終えました。
最後の指定年度である平成28年度に指定を受けた11校も令和2年度にはその期間を終えることとなります。

残念ながら平成29年度以降の新規の指定はなく、令和3年度以降は開始当初のスキームでの指定校はなくなります。

国際人材の育成はますます重要になっているので、SGH事業がこのまま消えてしまうのはとても残念なことです。

 

SGHアソシエイトとは

この事業が始まった平成26年度の募集の際には、初めての公募にも関わらず、246校の申請がありました。

そこで文部科学省は、SGH事業の構想をより多くの学校に広めていくため、SGH事業を踏まえたグローバルリーダー育成に資する教育の開発・実践に取り組む高等学校などとうを「SGH アソシエイト」と位置付けました。

いわば「準SGH」ともいえるSGHアソシエイトとして、初年度の平成26年度は54校(うち国立6校、公立27校、私立21校)、平成27年度は55校(国立1校、公立24校、私立30校)、平成28年度は7校(国立1校、公立4校、私立2校)が指定されました。

それぞれの学校における取り組みに関する情報を共有するとともに、その状況を発信するための場としてSGHコミュニティを形成します。

SGHアソシエイトは、SGHとともにそのコミュニティに参加し、情報交換や発信を行います。

 

SGH認定は高倍率!?SGHの認定基準

初年度の平成26年度は246校の申請に対し56校が指定されるという、約5倍という高倍率でした。

選ばれた学校の中には、全国的に有名な進学校や地域のトップ校も名を連ねていますが、いわゆる進学エリート校でない学校もあります。

では、どのような認定基準で選ばれたのでしょうか。

応募した各校は構想調書を提出し、外部有識者会議であるスーパーグローバルハイスクール企画評価会議が、計画の実現性、発展性、継続性などの観点から審査しました。

また、多様性を確保し偏りがないように、取り組みの特徴や、地域性、国立・公立・私立のバランスも配慮されました。

構想調書では、研究開発の内容と課題研究について、各校での取り組みの実施方法や検証評価方法を詳しく定められ、それまでの各校での教育課程や地域性などを活かし、現実的かつ効果的な課題研究を設定することが求められます。

高校生にとっては体験が何よりも大きな影響を与えるため、いかに国際的な社会課題を自主的かつ実体験をもって解決することができる課題になっているかが評価のポイントとなるのでしょう。

スーパーグローバルハイスクールの取り組み

では、SGHではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

各校は、応募の際にそれぞれの研究開発課題を提出しています。

それぞれの課題の中で、目指すべきグローバル人材像を設定し、グローバルな社会課題、ビジネス課題をテーマに、大学や企業・国際機関と連携しながら、総合的・探求的な学習を行います。

学習内容や具体的な課題の設定、目指すべき人物像は、それぞれの地域や学校の特性を活かしたものになっています。

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スーパーグローバルハイスクール指定校と活動内容例

SGH指定校では、通常の教育課程の基準によらない独自のカリキュラムを編成し、実施することができます。

多くの指定校では、英語科・社会科などの教科学習だけでなく、企業や海外の高校・大学などと連携した国内外研修や探求型学習などを行なっています。

通常の授業だけではなく、グループでの課題解決やディスカッション、論文作成、成果発表会、プレゼンテーションも積極的に行われ、生徒の問題解決能力コミュニケーション能力の育成が期待されます。

では、現在のいくつかの指定校での具体的な取り組みを紹介します。

 

宮城県 公立宮城県仙台二華中学校・高等学校

宮城県の県立仙台二華中学校・高等学校では、「北上川、メコン川をフィールドとした世界の水問題解決への取組」を研究開発課題としています。

「地球環境」をテーマに、人文社会科学的な手法で探求する「IS (International Study)」と自然科学的な手法で探求する「SR (Scientific Research)」を用い、「世界の水問題」に関する国際的な課題研究に取り組みます。

中高一貫という特性を活かし、中学の最初の2年間は自分を知り広げる「啐啄期」、その後の4年間は世界を広げ自分を磨き鍛える「躍動期」、最終年度の高校3年次を世界に飛び立つ「飛翔期」と位置付け、模擬国連などへの参加、姉妹校交流、ケース・メソッドによる授業などが実施されました。

SGHの課題研究を通じ、グローバルリーダーとして必要な「適切な世界観」「本質を見抜く力」「共感する力」「構想力」「相対化する力」の5つの資質・能力を身につけることを目指しています。

学校ホームページ:https://nika.myswan.ed.jp/
SGHとしての取り組み:https://nika.myswan.ed.jp/sgh_jp/sgh

 

群馬県 公立高崎市立高崎経済大学附属高等学校

群馬県にある高崎市立高崎経済大学附属高等学校では、高・大・産連携によって行う研究課題「日本企業の海外戦略」を柱としています。

高校での3年間を通じ、グローバルリーダーに必要な「自分の考えを持った上で異なる考え方を受け入れ、共感するとともに違いを明確にして議論しまとめ上げられる能力」を育成することを目指しています。

1年次では、高崎市内の企業の海外進出などにおける現状と課題を高崎市内の企業訪問や工場見学などで学びます。

2年次では、日本の大手企業の仕組みと評価方法について経営支援NPOや高崎経済大学との連携を通じて知見を広げます。

3年次では、日本企業の海外戦略の現状と課題について学び、3年間の集大成としてSGH成果発表会を行います。

また、希望者は米国や韓国での研修に参加でき、高崎市と世界をつなぐ、地域に貢献できるグローバル人材としての基盤を作ることができます。

学校ホームページ :http://www.tcue-h.ed.jp/
SGHとしての取り組み:http://www.tcue-h.ed.jp/sgh/2018/top.html

 

埼玉県 国立筑波大学附属坂戸高等学校

埼玉県にある筑波大学附属坂戸高等学校では、「先進的な総合学科を活かした持続可能なアセアン社会を創るグローバル人材の育成」を研究開発の課題としています。

申請時点ですでに20年以上を費やしている総合学科の実践経験があったこの学校では、1年次では全員がカナダでの海外校外学習に参加し、2年次では選択制でインドネシアでの国際フィールドワークなどにも参加できます。

3年次では個人で課題を設定した卒業研究を行います。

共通の柱として「多様性の中の統一を国是とするインドネシアからSDGs時代に世界と日本が学ぶこと」があり、環境問題、国際関係、災害対策、文化研究などの課題を各自が設定します。

卒業研究においては筑波大学と連携して英語論文作成やゼミ指導も行われます。

また、コミュニケーション能力向上のため、英語に加え他にもうひとつの外国語(インドネシア語)を時間外選択科目として履修可能です。

学校ホームページ:http://www.sakado-s.tsukuba.ac.jp/
SGHとしての取り組み:http://www.sakado-s.tsukuba.ac.jp/wwl/

 

東京都 私立早稲田大学高等学院

東京都にある早稲田大学高等学院では、学内外における異文化との接触機会を増やし、学校が「異文化」や「多様性」を日常的に考えられるような世界に開かれた多文化共生空間となること自体を課題研究のテーマにしています。

日常的な学習環境や課外プロジェクト活動を通じて、「外国人、企業・NGO等、大学、教養(古典)、地域社会」という「五賢人」の多様な知と出会い、多文化共生社会を創造するグローバルリーダー育成を目指しています。

それまでの国際的な取り組みは課外活動として行われていたため、SGH指定をきっかけに教科内での取り組みや課外プロジェクト学習の充実など、生徒全員が多様な知に出会える環境を整備しました。

この学校では、英語以外にフランス語・ドイツ語・中国語・ロシア語の4言語から選択した第二外国語を学習することができます。

また、総合的な学習の時間では、「自ら問いを立て、仮説をつくり、論証して議論する力」をつけることを目指し、個人またはグループワークを行なっています。

学校ホームページ:https://www.waseda.jp/school/shs/
SGHとしての取り組み:https://www.waseda.jp/gakuin/sgh/sgh-q/

 

東京都 私立品川女子学院

東京都にある学校法人品川女子学院では、現在の我が国には女性起業家、特に社会企業分野における起業家が少ないことから、「学校と社会が連携し、『企業マインド』を持つリーダーを育成する研究」を研究開発課題としてあげています。

自ら社会の問題を発見し、多様な人を巻き込んで問題解決に一歩を踏み出す人の育成を目指し、問題発見力、共感力、内省力、発信力、英語コミュニケーション力、英語プレゼン力の6つの力を身につけることを目指しています。

1年次では、全員が「デザイン思考」を通じて問題発見力を身につけます。

2年次では、総合学習の時間にリーダーシップについての研究や家庭科授業で衣食住などの事象についての日本と海外との比較分析を行います。

それらの実践の場として、起業プランコンテストなどで成果の発信を行います。

また、学外からグローバルビジネス界のリーダーを招いての特別講座も行われます。

学校ホームページ:https://www.shinagawajoshigakuin.jp/
SGHとしての取り組み:https://www.shinagawajoshigakuin.jp/sgh/

 

福井県 公立福井県立高志高等学校

福井県にある県立高志高等学校では、「ふくい発、東アジアの発展と希望に貢献するグローバル・リーダーの育成」を研究開発の課題としています。

まず、国際化を進める大学や企業などと連携して、海外フィールドワークやインターンシップを含む課題探求学習を行います。

次に、英語学習環境を整備し、生徒と教員の英語力向上に取り組みます。

そして、さらに国際的な環境を整備するため、帰国子女や外国人生徒の受け入れを促進し、学外の各種コンテストへの参加や他校と交流する機会を増やしています。

1年次では、提示されたキーワードから課題を選択し、リサーチを行なったのち、そこで得た知識や情報をまとめます。

2年次では、「福井の活性化について研究する」というコアテーマに基づき、自ら課題を設定し、情報収集、分析、考察、発表の過程を英語で行います。

3年次では自分で設定したテーマについて、英語の文献の講読やフィールドワークも交え、最後に英語で研究発表を行います。

学校ホームページ:https://www.koshi-h.ed.jp/
SGHとしての取り組み:http://www.koshi-h.ed.jp/ssh_sgh/sgh/

 

長野県 公立長野県長野高等学校

長野県にある県立長野高等学校では、普通科教育に探求活動を導入し、「観光を核にした国際都市NAGANOを担うグローバルリーダーの育成」の研究課題を行いながら、思考力、判断力、表現力の育成を行いました。

長野県行政および企業、関係団体と連携し、「観光」を中心に据えたクロスエリア型グローバル観光戦略を研究検証し、有効な戦略を提案しました。

3年間かけて実施された研究は、海外からも参加者のある「善光寺グローバルサミット」で発表され、ホームページでは「SGHブログ」として日本語と英語で発信されました。

ほかにも訪日台湾高校生との交流ワークショップも行われました。

このプロジェクトを通じ、70%の生徒がグローバルな問題への意識が高まった、また80.5%の生徒が高校や大学で学ぶ意欲が高まった、など生徒の主体性育成の結果が現れています。

学校ホームページ:https://www.nagano-c.ed.jp/naganohs/
SGHとしての取り組み:https://www.nagano-c.ed.jp/naganohs/sgh/index.html

 

滋賀県 公立滋賀県立守山中学・高等学校

滋賀県にある県立守谷中学・高等学校では、「生活環境」や「循環型社会」をキーワードに、サステイナビリティの観点から、21世紀の日本が目指すべき成熟社会のあり方を追求することを研究課題にしています。

社会のあり方(地方自治)、自分のあり方(法と社会規範)、自然のあり方(生態系保全)の3分野について先進国や新興国の取り組みを日本のものと比較検証し、「持続可能な社会を実現する守山プロジェクト」を地方自治体に向けて提案しています。

1年次では、「サステイナビリティを考える」SGHワークショップをディベート形式で行い、理解力、論理的思考力、表現力、傾聴力、コミュニケーション能力を養成します。

2年次では、フィールドワークを通じ自ら切り開く力と創造力を養います。
そして最終の3年次では、「ドリカムレポート」という卒業論文に取り組みます。

3年間を通じて課題発見・解決力と主体的に学ぶ力、発信力を身につけることができます。

学校:http://www.moriyama-h.shiga-ec.ed.jp/
SGHとしての取り組み:http://www.moriyama-h.shiga-ec.ed.jp/contents/sgh/

 

大阪府 公立大阪府立三国ヶ丘高等学校

大阪府の府立三国ヶ丘高等学校では、地球規模での持続可能な社会の構築に貢献する「創造的課題解決能力」を持つグローバル・リーダーの育成を目的としました。

1年次では、国際人としての理念と先進国の知見を学びます。

2年次では、フィリピンでのフィールドワークを通じ途上国の現状を学び、アメリカのリーハイ大学と国連での研修も行います。

リーハイ大学での研修では、5日間でグローバル経済やビジネスプランの構想についての講義を受け、実際にビジネスプレゼンを作成し、英語でのプレゼンにも挑みました。

そこからさらにフィリピンのエンドラン大学の学生のアドバイスを受け、「高校生ビジネスプラン・グランプリ」にも応募しました。

それまでは調べたことをまとめて発表するにとどまっていた生徒たちも、SGHのプロジェクトを通じて多面的な学びを行い、自分たちで論理的なデータ分析に裏打ちされた、異文化も視野に入れた課題研究を行うことができるようになりました。

学校ホームページ:https://www.osaka-c.ed.jp/mikunigaoka/all-index.html
SGHとしての取り組み:https://www.osaka-c.ed.jp/mikunigaoka/zenniti/08_SSH_SGH/SGH/sgh.html

 

徳島県 公立徳島県立城東高等学校

徳島県にある県立城東高等学校は、「四国徳島発・人類の健康と環境に貢献するグローバルリーダーの在り方について」を研究開発課題としています。

徳島県にある世界的な企業が、徳島の風土や文化に根ざしながら世界規模で事業展開を行なっていることに着目し、グローバリゼーションとローカリゼーションを兼ね備えた「グローカリゼーション」な活動にグローバルリーダーの資質を見出すことを研究テーマにしています。

教育課程の特例基準を活用した外国語科や保健体育科の授業、大学、企業、省庁、国際機関との連携による講演、インターンシップを通じて、人類の健康増進と環境保全の観点から研究を行いました。

姉妹校交流としてのフランス研修では環境問題についてのディスカッションを行いました。

また、大塚製薬の海外拠点であるインドネシアでインターンシップやCSR活動を経験しました。

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スーパーグローバルハイスクールの成果

SGHに指定された学校とその学校の取り組みを紹介しましたが、ではSGHは具体的にどのような成果をあげたのでしょうか。

平成26年度に指定した56校の5年間の取り組み終了後に外部の有識者による評価を行ったところ、「事業計画を上回る成果をあげており、事業目的は十分に実現された」のは7校、「事業計画どおりの成果をあげており、事業目的は実現された。」のは28校、「事業計画をやや下回っているが、事業目的はある程度実現された」のは3校でした。

過半数の指定校については成果があり、目的が実現されたと評価されています。

一方、「事業計画を下回っており、事業目的はあまり実現されていない」学校が18校あり、そういった指定校については取り組み状況や成果について、達成できなかった原因と改善点を検討する必要があります。

SGHの事業を通じ、SGH指定校とアソシエイト校においてはさまざまな教育課程が実践され、高校生が実際に海外での交流やフィールドワークなどを通じて、国際的な視点で物事を捉えられるきっかけになっていることは間違いありません。

海外の高校生との交流や、大学や企業との連携によって、通常の教育課程ではできない経験をすることができました。

そのような経験は高校生たちにとって、単に英語力の向上といったことだけでなく、その後の進路を考える上で大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

スーパーグローバルハイスクールの課題

とはいえ、当初の事業計画を実現できなかった学校が18校あったことも事実です。

3年が経過したところで行われた中間評価では、いくつかの指定校が事業計画を大幅に下回っていると指摘を受け、改善を求められました。

また、事後評価においては、教員のグローバルマインドセットの資質や能力の育成が求められるべきとも指摘されています。

まずは教員自身がグローバル人材としての手本となれるよう教員養成や研修を促進し、海外研修なども含めた工夫が必要とされます。

また、海外との交流事業は、安全面などで世界情勢の影響を受けやすく、交流する提携先や引率する人材の確保の面で実施が困難な場合もあります。

そして、今後、ICTを活用したオンライン交流の促進なども求められるでしょう。

今回の事業では、指定されたのは全国でSGH112校、アソシエイト116校のみで2020年現在全国の高等学校の総数約4900校から考えると約5%にすぎません。

これからのグローバル社会で活躍する人材を育成する事業としては、より裾野を広げる必要があります。

また、決して一過性のものにせず、継続的に未来のグローバルリーダーを育て続けることも重要です。

スーパーグローバルハイスクールの今後

平成30年に発表された中間まとめでは、これまでの事業のあり方を見直し、事業目的と内容をより合致したものとするため、令和元年からカテゴリーを「アドバンスト型」「リージョナル型」の2つに分けることを提案しています。

アドバンスト型では、世界で活躍できるイノベーティブなグローバル人材を育成するための高度かつ先進的なカリキュラムの研究開発が目的とされています。

それに対しリージョナル型は、グローバル人材の裾野を広げるため、グローバルな視点を持ってコミュニティーを支える地域のリーダーを育成するためのカリキュラム研究開発を目的としています。

令和元年度から、外交などのトップ人材を育成するアドバンスト型を初年度10校程度、将来的に50校程度、地域のリーダーを育成するリージョナル型は初年度20校程度、3年間で60校程度の指定を目指していましたが、平成29年度以降SGHの新規の指定は行われていません。

また、平成30年度時点でSGHの指定校のうち29校が「スーパーサイエンスハイスクール」にも指定されています。

グローバルに活躍する人材の育成という広い共通目的を考えると、SGHとスーパーサイエンスハイスクールが互いに連携し、プログラムとしての相乗効果を図ることが求められます。

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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは

前述したスーパーハイスクールとは、将来の国際的な科学技術人材を育成することを目指し、理数系教育に重点的に行う高校を文部科学省が指定する制度のことです。

平成14年度から始まり、学習指導要領によらないカリキュラムの開発や実践、課題研究の推進、観察や実験を通じた体験的、問題解決的支援が行われています。

スーパーサイエンスハイスクール指定校においても、国際性を育てるために必要な英語での理科授業やプレゼンテーションの演習が行われている学校もあります。

科学技術分野での国際競争力を高めるためにも、スーパーサイエンスハイスクールとスーパーグローバルハイスクールの連携により、科学分野でのグローバルリーダーの育成も実現したいところです。

スーパーサイエンスハイスクールについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは!指定校とその取り組み

国際教育で注目したい、国際バカロレアとは

グローバル教育において注目したい言葉として「国際バカロレア」があります。

国際バカロレア(International Bacccalaureate, 以下IB)は、世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラムのことです。

日本では、政府が2018年までにIB認定校を200校とすることを目指していますが、令和2年4月現在、認定されているのは155校となっています。

IBの教育プログラムを受けると「ディプロマ」という認定証書を受け取ることができ、そのディプロマは世界各国の多くの大学で正規の入学資格や受験資格として認められています。

また、IBプログラムは、多文化に対する理解と尊敬を通じて、平和でより良い世界の実現のために貢献する探究心、知識、そして思いやりのある若者の育成を目的としています。

IBプログラムを通じて国際的な視野を持つ人材の育成が期待できるでしょう。

スーパーグローバルハイスクールの指定校でなくとも、IBプログラムとして認定されている高校に進学することで、グローバル人材になるための教育を受けることが可能です。

詳しくりたいかたはこちら!
国際バカロレア(IB)とは?認定校・課題・メリットまとめ

まとめ

スーパーグローバルハイスクールは、急速に進むグローバル化に対応できる人材を育成する目的で始まりました。

海外との交流事業や、大学や企業との連携を通じ、高校生が国際的な視点で物事を捉え、自主的にグローバルな社会課題に取り組み、世界を舞台に活躍できるコミュニケーション能力を身につける良い機会となっています。

残念ながら令和に入ってSGHの指定校が新規に発表されていませんが、今後、日本の国際競争力を高めるためにも国際人材の育成は急務といえます。

SGH、もしくはそれに準ずる事業を通じ、1人でも多くの高校生が国際的な視野を持ち、将来のグローバルリーダーとして活躍できるよう環境を整えるのが望まれます。

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